日経BP社 (2004/05/27)
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ダイソンのデュアルサイクロン式掃除機はデザイン的に高く評価されていることもあり、数年前からその存在は知っていました。しかし、2000年に結婚したのを機会に新しい掃除機を…とあれこれ調べたときには、ちょうどその頃登場していた日本製のサイクロン方式(と称する)掃除機がダイソンの半分くらいの価格でまあまあの性能であったため、そっちを購入しました。そんなこんなでいまだダイソンの掃除機には直接の縁は無いのですが、たまたま何かで見つけて面白そうだと思い、この本を購入してみました。
内容は、デュアルサイクロン方式の画期的な掃除機であるDC01を自分の手で生産して世の中に送り出し、成功を収めるまでの物語です。実際に成功する前の道程はかなり大変なものだったようですが、その過程で起きたさまざまな困難について、かなり詳細に記されています。実名を挙げて競合メーカや自国の技術を正当に評価しようとしない英国への辛辣な批判が繰り返されるのは正直なところ読んでいて辛いときもありました。しかし、粘り強く自分の設計の素晴らしさを信じて実際に世の中に送り出すところまでを正直に語った物語は、読み終えてみるとすがすがしい印象を受けるから不思議です。
この本の中で何度も登場して印象的なフレーズは「エジソン流」です。これは、繰り返し繰り返し、うまくいくまで試作品を延々と作って検証し続ける(変更は1度に1つの要素だけ)という方法で、かなり泥臭く聞こえる方法です。しかし、本当に新しいものを作り出そうとするのであれば、何かをしただけで飛躍的に発展するということは無く、地道な検証の積み重ねによってのみ実現できる、というのはわかりやすい話です。自分で何かを作るときにも、「何か新しいツールを使ったら飛躍的に楽になったりしないかなぁ?」と思うことはありますが、大抵そんなことは無くて、泥臭くて地味な検証の積み重ねが必要になることは何度も経験していますので、これに関しては納得できます(笑)。
また、最後の方の章の「経営哲学」について語った章で紹介されていますが
エンジニアリングとデザインを同時に考える。デザイナーはテストに参加し、同じくエンジニアはコンセプト作りに参加する。
というのはとても共感できる哲学です。エンジニアの役割はこれ、デザイナーの役割はこれ、と細かく分業していくと、根幹から良いものを作るということにはならず、それぞれの与えられた役割の中だけでの小手先の改良や自己主張に留まってしまいます。有名デザイナーを起用して外見は洗練されたものになっても、中身はぐちゃぐちゃのままの携帯電話を「デザインケータイ」と称して自慢げに発売している人々も(そしてついついそんなものを買ってしまった自分も)、この点は忘れないでおきたいと思います。
この本を読んだからといって何か新しい知識が身につくとか、ビジネスを成功させるためのノウハウがわかるとか、ということを期待すると期待はずれに終わるかもしれません。しかし、エンジニアやデザイナーの仕事に興味を持っている人であれば、読んでみて損は無いのではないかと思います。

DC01はモーターがどれくらい使われたかとかっていう履歴をマイコンを使って記憶させておいて、故障の際にボタンを押すと小さなスピーカーからその情報を音で出す仕掛けになっているんですね。サービス・センターに電話してその音を聞かせると、状況が伝わるということなんです。それをCMで知った時は、なるほど高価な理由はそういう目に見えないサービス代を含めてのものなんだなと合点が行きました。まあ、滅多に壊れない構造なんでしょうが、今までの使い捨てのメーカー製品とは「設計」が違うことだけは確かですね。
投稿情報: genie | 2006.04.03 08:29
掃除機本体がシリアル番号や自分の状態を伝える、というのは面白い発想ですよね。ダイソンの製品は、必ずしも満足する人ばかりではないようですが、一度自分で使い込んでみたいなぁと思っています。
使い捨てではなく、長く使っていけるように、というのは小さなものを作るときにでも常に考えて行きたいことだと思っています。
投稿情報: 寿小五郎 | 2006.04.03 20:35