Link: Invited speaker (B. Buxton)
May 28, Saturday, 09:00-10:00
Bill Buxton
Causality and Striking the Right Note
Bill Buxtonは伝説的なXerox PARCを初めとしてかなりのキャリアを持つ研究者/エンジニアで、この日のレクチャーもかなり密度の高い内容でした。もともと早口な人なのだと思いますが、この日は時間が短いこともあってさらに早口で、ネイティブでない自分には大筋を把握するのがやっとでした(笑)。しかし、非常に多くの刺激的な内容を含んだレクチャーだったと思います。1970年代からパーソナル(とはとてもいえない大きさだが)のコンピュータを用いた研究を行っていたことは本当に驚くばかりですが、そこで紹介されたテーマや問題点が、現代にも通じるものになっていることには改めて驚かされました。NIMEでは昨年のRobert Moogの様にこの世界での歴史的な人物を基調講演に迎えることが多いようなのですが、現在も現役で活躍している人たちの話は、単なる老人の昔話ではなく、とても興味深いものですので、来年以降も楽しみにしています。
Bill BuxtonはNIME05の予稿集に次のような文章を寄せています。
The question that repeatedly comes to mind is: why is this "live"? What difference does it make? Is there anything being brought to the material that I am listening to that would not have been there if it was just tape playback? I must confess, that I have the same emotional and intellectual response to watching someone huddled over a laptop as I did 20-30 years ago when they were huddled over a Revox tape recorder.
観客にとって演奏者が何をやっているのかわからないパフォーマンス(例えばいわゆるラップトップ・ミュージック)は、テープレコーダーのスイッチ(プレゼン中にもラップトップミュージシャンの写真とテープレコーダーの写真を提示して説明)を押して再生しているだけと何が違うのか?という問いかけは深いものがあります。もちろん、何をやっているのかが観客にわかりやすければいいというものではありませんが、「ライブで演奏するとはどういうことなのか?」を改めて問いかけたものだと思います。
この写真はプレゼンの中の一部で、1971年頃のオタワでの研究の様子だということでしたが、この当時から始まり、Xerox AltoやMacintoshよりもずっと以前にマウスとGUIを用いたコンピュータ音楽作曲アプリケーションがきちんと動作していたということにはかなり驚きました。もちろん、現在のLogicなどと比較するとかなり初期のものなのですが、それでもピアノ・ロールや、グラフィックによるエンベロープの表現や編集などがきちんと実現されていたというのは驚きでした。また、この当時から、ネットワーク接続された端末から作曲家がアクセスし、他の部屋に置かれたサーバで必要な演算が行われるような大規模なシステムが構築され、「機械に囲まれたうるさい部屋の中ではなく、作曲に適した環境で作業できるように」ということが配慮されていたのにも感心しました。

続いて紹介されたreconfigurable(再構築可能)なユーザー・インタフェースの研究にもかなり驚きました。今回、NIME05で発表したSpinnerは、当初どのような副題をつけようか迷いました。いろいろ悩んだ末、最近のマイコン技術でよく耳にするreconfigurable(再構築可能)という言葉を選択しました。しかし、(特殊な単語ではないために当たり前だとしても)同じコンセプトのものが1980年代に研究され、それなりに実用になるレベルになっていたということは驚きでしたし、自分の勉強不足も痛感しました。最近のこの手の製品としてはもうすぐ発売になるLEMURなどがありますが、まだまだ研究の余地のある、面白い分野だと再認識しました。
などなど、いろいろな意味で刺激になった基調講演でした。Bill Buxtonの研究に関してはほとんど今まで知りませんでしたので、この機会に論文などを読んでみたいと思います。
コメント